会社員が手取りを圧縮して社会保険料金を減らす方法

生活関連

会社員は税金と社会保険料が強制徴収

会社員は健康保険と厚生年金、雇用保険料が支給される毎月の給料(と、あれば賞与)から強制徴収されるようになっています。さらにそこから所得税と住民税が引き去られ手取り賃金となります。

これらの金額は、毎月の給与が支給される際に自動的に引き去られます。所得税と住民税については、年末調整や確定申告で各種控除を適用することで減らすことができます。しかし、社会保険については、会社員で有る限り通常の方法では減らす事はできません。

なんとかして強制徴収される社会保険料を減らす事はできないか考えてみました。

選択式企業型確定拠出年金と借上社宅で社会保険金額を減らす

社会保険の金額は、毎月の報酬月額を金額によって区分した等級によって決まってきます。

社会保険金額(厚生年金と健康保険)の決定方法

月額報酬に対する等級は保険料額表としてまとまっています(参考:全国健康保険協会)。

仮に、東京の令和3年3月から適用されている健康保険・厚生年金保険の保険料額表はこちらから確認することができます。

例えば、月の給与額が101,000 ~ 107,000円の人は、標準報酬月額104,000円になります。この場合、健康保険は6等級、厚生年金は3等級に分類されます。

労使折半の結果、介護保険を支払わない場合は健康保険料が5,116円で、厚生年金保険料は9,516円が必要となります。

これが標準報酬月額50万円の人になると、健康保険は30等級で24,600円、介護保険が必要な年齢なら29,100円。厚生年金は27等級となり45,750円にもなります。月収5倍で健康保険はほぼ5倍、厚生年金は9倍支払わなければなりません。

どうすれば社会保険の支払いを抑えることができるか?

月収が低くなれば社会保険の負担を軽くすることができます。

当然のことなのですが、それだけだと単に収入が低くなって投資や自由に使えるお金まで減るだけです。そこをなんとか出来る方法はないものでしょうか?

標準報酬月額を低くする方法

毎年、年末が近くなると年末調整がやってきます。生命保険や地震保険に対する控除を利用することで、その一年に支払った所得税や住民税を返してもらう。という事は多くの会社員がやっていることではないでしょうか?

個人型確定拠出年金(iDeCo)も、掛け金が全額控除の対象となるため利用されている人が多いと思います。人によっては退職金が多すぎて、いざiDeCoの受け取りとなった時に退職所得控除以上の金額となって納税額が増えてしまう。という贅沢な悩みを抱えることになるかもしれませんが、私は退職金がある会社に勤めていないので一旦無視しておきます。

所得控除では標準報酬月額を低くできない

年末調整や確定申告での所得控除は、すでに支払った税金を戻してもらうだけで、社会保険料の決定に使われる標準報酬月額にはなんの影響も与えられません。

なんとか標準報酬月額を低くできる制度はないものでしょうか?

選択制企業型確定拠出年金(選択制DC)が使える会社

選択制企業型確定拠出年金が使える会社であれば、将来のための投資をしつつ標準報酬月額を抑えることができます。

選択制DCでは給料の一部を現金で受け取るか、企業型確定拠出年金(DC)の掛け金とするかを選ぶことができます。企業型DCの掛け金とした場合は、掛け金分を月額の給与から引く=標準報酬月額を低くすることができます。

一方で、現金で受け取った場合はそのまま標準報酬月額が計算されるため、もし確定拠出年金で運用したいのであれば選択制DCに掛け金を振り分けたほうが、税金と社会保険料を低く抑えることが可能となります。

借上社宅制度がある会社

借上社宅制度がある会社の場合、都道府県別に現物支給として給与計算した上で標準報酬月額が決まってきます。(参考:日本年金機構の現物給与の額価

社宅の場合、居住スペースのサイズに一定の金額をかけて、自己負担分を引いた金額が給与額に追加されて計算されます。

東京で令和3年4月からだと一畳当たり2,830円をかけた金額で計算されます。

借上社宅制度が使える代わりに、給与が抑えられている会社を選ぶことで、結果として自分で住居費を支払うより社会保険を抑えられる可能性があります。

どれくらい標準報酬月額を圧縮できるか試算

標準報酬月額50万円の人が、選択制DCと借上社宅でどれくらい標準報酬月額を抑えることができるか試算してみました。

標準報酬月額50万円

健康保険は30等級で24,600円 / 介護保険が必要な年齢なら29,100円

厚生年金は27等級となり45,750円

選択制DCとして月5万円

東京で居住空間18畳、自己負担3万円

選択制DCでは5万円を給与の支給額から減額することができます。

居住空間18畳で自己負担3万円の社宅の場合、

2,830 X 18 – 30,000 = 20,940円

20,940円が給与の支給額に追加されて標準報酬月額が決定されます。

東京ですと1LDKのマンションだと、場所にもよりますが10~20万円くらいはするでしょうか?とりあえず15万円としておきます。

額面月額50万円では手取りで37.5~42.5万円程度となって、そこから家賃として15万円支払うことになります。

一方、額面50万円となるように企業型DCと借上社宅を組み合わせた場合は、50万円から選択制DCの5万円を引いて、さらに社宅の家賃15万円を引いた30万円に対して現物支給分と自己負担分を足した5万円を加えた35万円が標準報酬月額を決める給与額となる試算です。

額面月額35万円の場合、標準報酬月額は36万円

健康保険は25等級で17,712円 / 介護保険が必要な年齢なら20,952円

厚生年金は22等級となり32,940円

税金を支払った場合の手取りは27~30.6万円程度の計算となります。

額面月額50万円、手取りで37.5~42.5万円の場合、そこから家賃15万円と年金5万円を支払わなければならない計算になります。会社員はiDeCoに5万円かける事ができないものの、家賃と年金20万円を支払った後に残るのは17.5~22.5万円。

選択制DCと借上社宅を併用することで、最終的に手元に残る金額を増やす事ができそうです。

デメリットも存在

将来のために投資ができる上に住宅の費用も賄えて、さらに手取りも少し増やすことができそうで良い事だらけに見えますがデメリットも存在しています

将来もらえる厚生年金が少なくなる

毎月納める金額が少なくなると、必然的に将来受け取る事ができる厚生年金からの年金受給額も減ることとなります。

報酬比例部分の受給額は年額で、標準報酬月額 × 5.481 / 1000 × 加入月数 によって計算する事ができます。

標準報酬月額50万円の人と、36万円の人が30年年金に加入したとすると・・・

(50 – 36) x 5.481 / 1000 × 12 × 30 = 年額27.6万円程度の差

30年受給した場合は828万円の差となります。この差を上回るリターンを選択制DCで出す事ができれば良い計算となります。

実際には三十年間の給与がずっと同じわけではないので、差は少なくなるはずです。

万が一の際、遺族年金も少なくなる

厚生年金の被保険者であるときに死亡した場合、遺族には遺族年金が支給されます。

死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額が支払われるのですが、標準報酬月額が低くなると報酬比例部分も少なくなるため結果として遺族が受け取る事ができる金額も少なくなります

これに関しては、家族の構成によって掛け捨ての生命保険に加入してリスクを減らすなどの対策が必要となるかもしれません。

傷病手当金も少なくなる

病気や怪我で働けなくなり、会社からも給与が支払われない場合、4日目から最長1年6ヶ月は傷病手当金を受け取る事ができます。

支給金額は、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 / 30日 X 2 / 3

直近12ヶ月の標準報酬月額に変化がなかった場合は、標準報酬月額の3分の2を30日で割った金額が、1日に受け取れる金額となります。

標準報酬月額50万円の人: 50 * 2 / 3 / 30 = 1.11・・・1日当たり1.11万円

標準報酬月額36万円の人: 36 * 2 / 3 / 30 = 0.8・・・1日当たり0.8万円=8,000円

この差額については、収入保障保険で標準報酬月額と同程度となるくらい保障をつけるとか、投資の配当収入などで補うことができそうか等で判断する必要がありそうです。

実際に転職してみました

なぜこのような面倒なことを思いついたのかというと、やってみたい仕事が見つかったものの提示を受けた年収が下がってしまったためです。そのままではとても転職に踏み切ることはできなかったのですが、その会社には選択制DCと借上社宅制度がありました。

机上の計算ではデメリットはあるものの、なんとなく手元に残る金額が同じとなりそう。今までの投資のおかげで、ある程度の確定拠出年金と配当再投資ができる状態が整っていました。そのため転職に踏み切りました。

さすがに検証するためだけに転職する訳にはいきません。

保険料の随時改訂がされるまでがきつい

社会保険料の標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月の報酬月額から年に一回決定されます。

それとは別に、3カ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額に2等級以上の変化が生じた場合、随時改訂として標準報酬月額の見直しが入ります。

つまり、転職後は最低でも3ヶ月間は、支給額が低くなっているにもかかわらず、以前の標準報酬月額を元にした社会保険料を支払わないとならないということです。しばらく辛抱が必要です。

保険料変化の実際

転職とともに保険料がどのように変化したか記録を見てみます。

転職前の給与

転職前の給与は次のような状態でした。

支給 54万円程度

厚生年金 48,495 / 健康保険 25,175 / 介護保険 5,035

税金など控除されて手取り424,741

そこから住宅ローンと管理費が13万円程度、iDeCo 25,000円、積立NISA+投資信託5万円

手元に残る金額22万円程度

転職直後の給与

転職直後はこのような状態です。まだ選択制DCも借上社宅の手続きも終わっていない状態です。

支給 50万円

厚生年金 48,495 / 健康保険 25,175 / 介護保険 5,035

税金など控除されて手取り40万円程度

そこから住居費が13万円程度、iDeCo 25,000円、積立NISA+投資信託積立5万円

手元に残る金額19.5万円程度

選択制DCと社宅開始後の給与

借上社宅に切り替えることで支給額が減り、選択制DCの掛け金を支払うことで課税対象金額が変更となります。

iDeCoを選択制DCへの切り替えに数ヶ月かかりました。切り替えが終わった後は以下のようになります。

支給 39万円程度+選択制DC5万円積立

厚生年金 48,495 / 健康保険 25,175 / 介護保険 5,035

税金など控除されて手取り28万円程度

そこから社宅利用料が2.3万円程度、積立NISA+投資信託積立5万円

手元に残る金額21万円程度

確定拠出年金分で積立額が増えているにもかかわらず、手元に残る金額が増えています。

保険料随時改訂済みの給与

社会保険料の随時改訂が入った後の給与明細を確認してみました。

手元に残る金額は予想の通り24万円程度となりました。ここから収入保障保険や生命保険控除目当ての自分の積み立てを支払ったとしても、ほぼ転職前の可処分所得を維持できるのではないかと考えています。

支給 39万円程度+選択制DC5万円積立

厚生年金 32,940 / 健康保険 15,300 / 介護保険 3,600

税金など控除されて手取り27万円程度

そこから社宅利用料が2.3万円程度、積立NISA+投資信託積立5万円

手元に残る金額24万円程度

転職で年収が下がったとしても、転職先の制度を活用する事ができれば可処分所得を維持して、さらに昇給する事ができれば手取り金額を積み増すことも可能です。

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